夏になると毎年思い出す―助産実習に全力を注いだひと夏。
今も全国の助産学生さんの中には、助産実習に向けて『分娩介助演習やテスト』に取り組んでいる方がいらっしゃると思います。(もう始まっている方もいるかも)
助産実習は辛くて、大変なイメージが先行していると思いますが…助産師になるために必要なスキルを学ぶチャンスです。
助産実習という大きな山場を越えた時、助産の見える景色が必ず変わります。私はこの助産実習を乗り越えた経験が今の人生で困難に出会った時に「あの大変な実習を乗り越えられたら私なら、この困難も乗り越えられるに違いない。」という自信につながっていると断言できます。
だから『助産師』を目指す後輩に全力でエールを送りたいです!!
『助産実習』前には、どんな準備をしたらいいの?
この記事はこんな助産学生さんにおススメ♪
- 何から準備したらいいか分からない学生さん
- どんな準備が必要か分からない学生さん
- 準備しておくことで、安心材料を増やしたい学生さん
- 効果的に助産実習を国家試験や入職した時に活かしたい学生さん
前置きが長くなりましたが…この記事は、これから始まる助産実習の準備を解説していきます!
準備のポイントはこの5つ!
- 分娩介助の流れ・助産技術の根拠を再確認する
- 助産過程・助産診断の思考の整理を行う
- 実習中に知識を確認するためのツールを準備する
- 実習指導者との報連相の方法を考える
- 体調を整える・ストレスコーピングの方法を知る
分娩介助の流れ・助産技術の根拠を再確認する
分娩介助の流れ
助産実習前に『分娩介助練習』をたくさん行われてきたと思います。
実際の患者さんと『ファントーム』は全然違うな…
と助産実習が始まれば実感すると思いますが、イメージトレーニングはすごく大切です!!
- 実際に清潔野を展開するのにどれくらいかかるのか
- 手洗いして~ガウン、清潔手袋を装着するまで何分かかるのか
何度も練習して自分の所要時間を把握しておくことはすごく大切です。
入職してからも、実際の分娩介助の場面は緊張の連続です…
だから『分娩介助の流れ』は頭で考えなくても身体が勝手に動くくらい練習しておくといいと思います。
清潔野さえ展開できれば、あとは指導者さんに手添えしてもらって、両手に感じる圧とか、産婦さんへの声掛けとか、胎児心拍の音とかを感じてください。まずは、『清潔野が展開できる』というところを目標に、実際の分娩を1つ1つ見て感じて、たくさん学んでください!!
技術は後からついてくるので、私は感じることが実習で一番大切な学びだと思っています。
分娩介助の流れは何度もイメージトレーニングをしよう!!
助産技術の根拠を再確認
実際の助産実習では、指導者として私が意識していることがあります。
- 安全な分娩介助をサポートする
- 学内での学びを実践でつなげるサポートをする
- 受け持ち産婦さんとの関係性作りのサポートをする
そのために、学生さんの知識や技術の再確認のために質問をすることがあります。
ここでは、実際の助産実習をイメージして『学生さんによく質問する内容』を想定して解説していきます。
児心音の聴取
児心音の聴取には主にCTGの装着とドプラーで間欠的に聴取する方法があります。
CTG装着のタイミングは?
入院時と破水時、分娩第2期には装着しようと思います。
入院時と破水時、分娩第2期以外にも、こんな時はCTGを装着しよう!!
- 前回のCTG装着から6時間以内
- 羊水混濁や血性羊水を認めた時
- 間欠的児心拍数聴取(ドプラー)で徐脈、頻脈を認めた時
- 分娩が急速に進行してきた時
- 子宮収縮薬使用中
- メトロイリンテル挿入中(用量41ml未満で未陣発の場合以外)
- 無痛分娩中
- 38℃以上の母体発熱中
- 上記以外に産婦が突然強い子宮収縮や腹痛を訴えた場合
- ハイリスクの場合
詳細は『産婦人科診療ガイドライン 産科編2020』を確認しよう!!
間欠的児心拍数聴取(ドプラー)では、どのくらいの頻度で児心音を確認しますか?
潜伏期は30~90分間隔、活動期は15~60分間隔で聴取します。
『産婦人科診療ガイドライン 産科編2020』では、間欠的児心拍聴取は15~90分ごとの監視とされており、施設によって違うので、実習先の施設を確認してください。
児心音はどこで聴きますか?
レオポルド触診法で胎位胎向を確認します。
レオポルド触診法は復習しておきましょう!!
児心音が恥骨の方に寄ってくると、児頭下降していると判断できるよ。
後方後頭位などの回旋異常の時に、児心音が聞こえづらい、途切れるということがあるよ。内診やエコーなどで一度回旋異常はないか確認してみてもいいかもしれません。
ドプラーで聴取する時は、子宮収縮直後に60秒間聴取しましょう!!
内診
内診は患者さんにとって『羞恥心』と『苦痛』を伴うものなので、患者さんに行う声掛けについて事前に学生さんに確認しています。
内診する時はどんな声かけをしますか?
「肛門圧迫感が強くなってきているので、赤ちゃんが降りてきてくれていると思います。状態を確認するために内診をさせください。」と声をかけようと思います。また、できるだけ力を抜いてもらえるように呼吸の声掛けも行います。
内診の目的を伝え、内診指を挿入する時は声掛けや呼吸を促しながら、ゆっくり挿入しましょう。
また、1回の内診でたくさんの情報を学びとってもらいたいと思っているので、以下のような質問もします。
子宮口や児頭に触れる以外にも内診という手技を通して、どんな情報を得ますか?
破水している方なら、羊水の色や量を確認します。未破水の場合は胎胞の緊満具合を確認します。また、産徴がみられれれば、性状の確認をします。
内診前にに分泌物(羊水・産徴)にも注目しよう!!
内診では「子宮口〇㎝開いている、展退は〇%、位置や柔らかさ、児頭下降度をStで評価する」と思いますが、子宮口の柔らかさとか、赤ちゃんの降り具合とかを正確に評価できなくても私はいいと思っています。
私自身、助産実習中に子宮口を探すのがやっとだったので…実際に担当する助産学生さんには、内診所見の正確性は求めません。それよりも
入院時より、子宮口が手前で触れて、胎胞がパンパンだったな。
経時的な変化を見たり、触ったり、自分の手で感じることが助産実習では大切だと思っています。
内診所見は実習指導者さんと所見をすり合わせて、経時的な変化から『正常』か『正常から逸脱しているの』か、そう判断した理由は何か?どんな助産ケアを実施するのか?を考えていきましょう!
外診(内診以外)
内診以外にも、分娩進行を判断する着目ポイントがあります。
- 児心音の聴取部位
- 痛みの部位
- 痛みに対する反応
- 声
- 発汗
- 体温の変化
- 分泌物
- 怒責
- 呼吸
- 便意、肛門圧迫感
- 吐き気、嘔吐
- 筋肉の張り
- 間欠期の眠り
ドロ~っとした粘稠性の産徴があると子宮口が7~8㎝に開いていることが多いよ。
嘔吐すると、有効陣痛がきている、分娩進行が早い気がするよ。血圧測定も併せて行うよ。(HELLP症候群でも嘔吐症状あるため)
先ほど示した着目ポイントの変化を助産実習で見て、触って、感じてきてください。そして、その感じたことを実習指導者さんと話してみてください。新しい発見、学びがあると思います。
分娩室移動のタイミング
分娩室にはいつ移動しますか?
実習施設によって、分娩室の数に限りがあったり…LDR(Labor/ Delivery/Recovery)室かどうかでも、移動のタイミングは異なると思います。
教科書的な復習になりますが…分娩室の移動のタイミングは↓
初産婦 | 経産婦 |
・子宮口全開大 ・陣痛間欠1~2分で強度の収縮がある ・怒責時に会陰に抵抗がある ・制止しにくい怒責感 ・排便感 ・粘稠血性分泌物の多量排出 ・肛門哆開 ・陰裂哆開 ・先進部または胎胞の排臨 ・外陰部の膨隆または抵抗 | ・子宮口6~8㎝ ・陣痛間欠2~3分で強度の収縮がある ・軽い怒責感 ・胎児下降感 ・排便感 ・肛門圧迫感 ・破水 |
導尿
トイレに誘導し、排尿を促すのも助産ケアの1つですが…墜落産にならないかアセスメントが必要です。怒責感が出てきている、分娩第Ⅱ期では導尿を行うことが多いです。
導尿はどんな目的で行いますか?
膀胱が充満していると、児頭の下降の妨げになるからです。
また、実習で導尿を行う時によくあるのが、
導尿口が分からない…
ってことがよくあります。私も学生の時に、インファントで練習した時は、ここですよ~って分かりやすかったのに、実際はどこにあるの~って焦りました…(笑)
分かりにくい時は、小陰唇をしっかり広げる、無影灯を付けてもらうと分かりやすくなる!!
破水
破水したら、どんなことに気を付けますか?
内診時に羊水の性状、色、量を確認します。内診所見と臍帯が触れないかを確認します。
他にも確認することはないかな?
破水時にCTGが装着されていれば、波形で児心音の低下はないか確認します。未装着の場合は、内診後に装着します。
自然破水しそうな状況の場合は、学生さんに上記のような質問を行います。
人工破膜についても少しだけ触れておきます。
臍帯脱出の危険性があるため、人工破膜による陣痛促進を行う場合は、「児頭固定(St-2より児頭が下降している状態)確認」後に行う。
産婦人科診療ガイドライン 産科編2020 p.202
ガイドラインにもあるよように、人工破膜には臍帯脱出の危険性があるので、基本は自然破水を待ちます。
児頭の実質が(St+2~3)まで下降して、胎胞が排臨してくる場合に行うことがあります。
会陰保護
肛門保護から会陰保護に切り替えるタイミングは?
初産婦さんなら、鶏卵大くらいに排臨してきたら行います。経産婦さんなら、排臨してきた時に行います。
切り替えるタイミングをいつも確認していますが、あくまで目安です。怒責の様子や児頭の下降具合で、早まることもあります。
肛門保護を始めたら、いつでも会陰保護に切り替える準備をしておこう!!
肛門保護は、会陰が膨隆し、肛門が哆開し始めたら、脱肛予防や清潔野汚染防止のために行います。
娩出力のコントロール
怒責はいつまでかけてもらいますか?
後頭結節が外れたら、怒責を止めてもらって、短息呼吸を促します。
清潔野を展開後、陣痛間欠期に産婦さんに短息呼吸の説明を行います。
助産学生さんあるあるは、手元に集中し過ぎて、産婦さんに声掛けを忘れちゃうこと。分娩介助の時に、タイミングよく伝えるのは本当に難しいです。そして、最初の分娩介助では周囲の助産師や産科医師に圧倒されて、理解していても声が出ないという場面もよく見ます。
はじめての分娩介助で上手に声掛けできなくても大丈夫。周りの助産師がどんな声掛け(短息呼吸の説明)をしていたか後から思い出してね。
経産婦さんなど、娩出力の勢いが強い方もいらっしゃいます。
安全に分娩介助(赤ちゃんが飛び出さない)するために、娩出力を調整する必要があります。娩出力の勢いがいいと判断した場合は
- 最初からレバーを放してもらい、胸の上で手を組んで怒責をしてもらう
- 息を止めずに、吐き続けるよう調整する
と調整することもあります。怒責を逃して5~8割の力で娩出を目指すイメージです。
もし産婦さんの娩出力が弱い時はどうしたらいいですか?
児心音や母体の体力をアセスメントし、吸引分娩などの介入が必要になるかもしれませんね。
誘発・促進分娩、吸引分娩やクリステレル胎児圧出法についても復習しておこう!!
吸引分娩は
- St±0以下に下降している(St+2~4まで下降している方が推奨)
- 20分5回以内
と『産婦人科診療ガイドライン 産科編2020』https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001189/4/pregnancy_delivery_and_neonates.pdfに明記されています。
この『産婦人科診療ガイドライン 産科編2020』のここは絶対見ておいた方がいいという部分をピックアップしておきます。
- CQ404 微弱陣痛による分娩進行遅延時の対応は?
- CQ406-1 吸引・鉗子娩出術の適応と要約、および実施時の注意点は?
- CQ406-2 子宮底圧迫法(クリステレル胎児圧出法)実施時の注意点は?
- CQ407 羊水混濁時の対応は?
- CQ410 分娩中の胎児心拍数及び陣痛の観察は?
- CQ411 胎児心拍数陣痛図の評価法とその対応は?
- CQ412-1 分娩誘発の方法とその注意点は?
- CQ412-2 分娩誘発を目的とした頸管熟化・拡張法の注意点は?
- CQ415-1 子宮収縮薬投与開始前に確認すべきことは?
- CQ415-2 子宮収縮薬投与中にルーチンに行うべきことは?
- CQ415-3 子宮収縮薬の増量・投与あるいは減量・中止を考慮するときは?
- CQ417 分娩時の血圧管理は?
- CQ603 正期産新生児のGBS感染症を予防するためには?
ガイドラインは書籍を購入しなくても、webで検索したら無料で閲覧できます♪
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001189/4/pregnancy_delivery_and_neonates.pdf
助産実習の前に、目次をサラ~っと見ておいて、実際の分娩介助や受け持ちの患者さんが『合併症妊娠』などあれば、ガイドラインに後から振り返って知識を広げると国家試験の対策にもなるのでおススメです。
助産過程・助産診断の思考の整理を行う
助産過程や助産診断は、『ペーパーペイシェント』を活用して思考の整理をするのがおススメです。
実習では、実際の患者さんに助産過程を展開したり、助産診断していくのですが…何度も実践することで思考の整理ができるようになります。
学内でも『ペーパーペイシェント』で事例展開しました。復習した方がいいですか?
復習は大切ですね。おススメは複数事例を展開することです。
複数事例と聞くと、そんな時間ないよって思うかもしれませんが…以下に複数展開のおススメの理由をあげます。
- 複数する上でパターンに気づくことができる
- 異常から逸脱した場合の展開をイメージできる
また時系列で入院~分娩第3期まで展開できるといいですね。
学内の演習で事例展開をたくさんすると思うので、複数の事例を自分が実際に受け持ちしている患者さんだと思い、具体的な実習行動計画に落とし込めるようイメージしていきます。
記録様式の情報収集のフォーマットに合わせて、最初は情報収集を始めましょう。
次のステップの『助産診断』時に不足情報に気づけば、また情報収集すればOK。
実際の実習では『電子カルテ』・『母子手帳』・『バースプラン』・『実際の産婦さん』・『家族』から情報収集しよう。
得られた情報から、助産診断を行います。
私は『マタニティ診断ガイドブック』を使用していました。
助産診断の『経過診断』と『健康生活診断』に分けて、ケア計画を立案していました。
目標(母児が安全に安楽に分娩できる)を達成するために、助産師として行うケア計画を観察計画(OP)・ケア計画(TP)・教育、指導計画(EP)に分けて、整理していました。
観察計画(OP)は型が決まってくるので、『実践マタニティ診断 第5版(医学書院)』のp.150・154・158を参考にしていました。
ケア計画(TP)は抽象的なので、具体的なケアに落とし込む必要があります。
教育・指導計画(EP)は『分娩進行状況の説明』、『分娩経過に応じた呼吸法・補助動作の指導』を中心に、分娩時期に応じた呼吸法や過ごし方を事前学習しました。
では抽象的なケア計画(TP)を具体的なケアに行動レベルで落とし込んでいきましょう。
分娩を進行させるためにはどうしたらいいだろう?
- 分娩の3要素を振り返る
- 励ましと労いで不安な気持ちの和らげる関わりをする
- 有効陣痛を促す関わりをする
- 児頭下降や回旋を促す関わりをする
- 産痛緩和やリラックスを促す
もう少し具体的にいうと…??
有効陣痛を促すためにはどうしたらいいのだろう?
- 乳頭マッサージ
- 踏み台昇降やお散歩
- ツボ押し
ツボ押しは『三陰交』をよく押すよ。
ツボの名前 | 効果 | 場所 |
三陰交 (さんいんこう) | 子宮の収縮力を高める働きがある 和痛効果がある | 内くるぶしの指4本上 |
合谷 (ごうこく) | 陣痛を誘発し分娩を促進する | 手の甲の親指と人差し指の骨の間 |
次髎 (じりょう) | 陣痛を誘発し分娩を促進する 和痛効果がある | 仙骨にあるくぼみ |
腎兪 (じんゆ) | 和痛効果がある | ウエストラインの背骨から指2本分外側の左右 |
太衝 (たいしょう) | 和痛効果がある | 足の親指と人差し指の間をかかと側に向かってなぞり、へこんでいる部分 |
ツボは押す以外にも温めるといいと思います。
児頭下降や回旋を促すにはどうしたらいいだろう?
- 四つん這いなど体位変換を行う
- ヒップローリング
- スクワット
- お風呂椅子に座る
- あぐらで過ごす
産痛緩和やリラックスを促すためにはどうしたらいいのだろう?
- 呼吸法
- 好きな音楽を流す
- 弛緩法(ストレッチ)
- 腰部マッサージ
- 足浴(アロマ)
- ツボ押し
- カイロやホットパックで温める
温めるのは腰部や下腹部の産痛部位にくわえて、会陰の伸展をよくするために会陰部位も温めるようにしています。
嘔気がある時や陣痛室で使用する場合は、配慮が必要です!アロマは、用途に合わせて上手に活用しましょう!!
陣痛を促す:ジャスミン、ゼラニウム
産痛緩和:イランイラン
リラックスを促す:ラベンダー
リフレッシュ:ペパーミント
体力温存するためにはどうしたらいいだろう?
- 水分補給を促す
- 食べやすいものを選択し、エネルギー補給を促す
- 疲労や眠気がみられる時は、休める環境を作る(消灯や人払い)
ケア計画(TP)を行動レベルに書き出すと、実際の助産実習での行動はイメージできましたか?
他にも『助産過程・助産診断の思考の整理を行う』ためにおススメの書籍を紹介します。
キーワドは赤字になっていて、基礎知識が分かりやすいです。事例から、情報の分析・解釈・アセスメントを経時的に考えることができる『助産過程・助産診断の思考の整理を行う』ためにおススメの書籍です。
『THE 分娩』はカラーで視覚的資料が豊富でイメージしやすいです。事例もあるので、『助産学実習プレブック―助産過程の思考プロセス』で基礎固めしてから、助産過程・助産診断を展開するのもおススメです。
実習中に知識を確認するためのツールを準備する
このポケットマニュアルを助産実習でよく学生さんが使っているのを見かけます。
『ビショップスコア』や『波形レベル』の確認にピッタリです!!
メモ帳で自分の知識の確認ツールを作るのもおススメですが、実際に作成する時間がないという助産学生さんは多いと思います。
『マタニティアセスメントガイド第5版』『マタニティ診断ガイドブック 第6版』に必要な資料を貼り付けたり、内診時に〇㎝と分かるように、目盛りをふっておくといいかもしれません。
『産婦人科診療ガイドライン 産科編2020』の重要ポイントやツボの場所など、資料を添付しておくと実習中にすぐに確認できておススメです。
実習指導者との報連相の方法を考える
まず、実際の実習をイメージして実習指導者に報告・相談・連絡(報連相)してほしいタイミングを考えてみました。
- 情報収集後
- 内診や助産ケアを行う時
- 異常なサインに気づいた時
- 休憩に入る時
学生さんとはじめましてでサポートをさせて頂くため、朝の挨拶の時に伝えてほしいポイントがあります。
- 分娩介助が何例目なのか(介助例数)
- 前回の分娩介助での課題は何か
- 今回の分娩介助の目標
実習指導者さんとのコミュニケーションについて、すごくまとまっている資料があるので、ご紹介します。
ぺリプリ仲間のまんまる*助産師 (@GRkwKaDJauYsFWv) / Twitterさんの報告のイラストです♡
学生時代にこのイラストに出会いたかった~♡可愛すぎる♡有益すぎる♡
ご本人にブログで紹介させて頂きたいことをお伝えし、快諾して頂きました♡ありがとうございます!!
多くの助産学生さん、新人さんに知ってほしいです!!
体調を整える・ストレスコーピングの方法を知る
助産実習は、いつもと違う環境—とてもストレスフル。当時、どんなメンタルだったか、どんなストレスがあったか回想してみました。
この実習を乗り越えられるかな。ゴールが見えない…
一生懸命ケアしたけど、緊急で帝王切開になっちゃった。
夜間のオンコール実習でヘトヘト。今まで経験したことがない疲れが…こんなにしんどいと思わなかった。
私がいることで指導者さんに迷惑をかけている気がする。
入職しても、似たようなストレスを感じていました。
不安感・無力感・負担感・罪悪感—ネガティブな感情に押しつぶされそうになっていました。
辛い気持ちに寄り添いたいな…
自分自身も辛い気持ちを経験したからこそ、助産学生さんのこの辛い気持ちに寄り添いたいという想いがあります。
そして、応援したい気持ちがあるのはー助産実習を乗り越えることで得られるモノが大きいから!!
助産師国家試験の受験資格が得られるだけじゃなく、『達成感』とか、『自信』とかも得られます。これは声を大にして伝えたいですね。だけど…ここは私が言わなくても、『助産実習は助産師になる上で乗り越えなければならない壁』ということを読んでいる方自身が一番理解していると思っています。
だから、ここからは実際に行っていたストレスとの向き合い方をご紹介します。
情緒的な対処法
ストレスの原因そのものに働きかけない方法です。いわば現実逃避です。
逃げていても課題は解決しませんが…向き合うのが辛い時があります。
私の場合は、実習記録が追いつかないまま分娩介助例数が進んだ時に強いストレスを感じました。
実習が終わって、学生室や帰宅した時にずっと頭を『記録』『記録』…ってグルグルしていた時、現実逃避でカラオケに1時間だけ行ったことがあります。
カラオケ行ってる場合ちゃうやろ!!
ってツッコまれそうですが…カラオケって時間指定されるので、時間を決めて気分転換できるのでおススメです♪
歌う以外にも大きな声で普段言えないことを吐き出しまくりました…マイクを使って(笑)
カラオケじゃなくてもいいので、少し現実から離れて気分転換する。時間を決めてリフレッシュする方法を見つけておくことをおススメします。
助産実習以外にも国家試験の前や入職後、ストレスが大きくなりやすい時期は今後も必ずおとずれるので…自分なりの対処方法を見つけておくことをおススメします。そして、複数のストレス解消法・緩和法を持ち合わせているとストレスと上手に付き合っていくことができます。
認知的な対処法
情緒的な対処法(現実逃避)と正反対です。ストレスや課題と直接向き合います。例えば、『記録』が溜まっているなら、『記録』するっていう当たり前な話になっちゃうのですが…
ここでは考え方のクセに偏りがないか、自分の考えを見つめ直す方法を紹介します。
ストレス反応を強める考え方のクセとして
- 全か無か思考
- 一般化しすぎ
- べき思考
- マイナス思考
- 深読み
- 先読み
全か無か思考
『国家試験に落ちたら、人生終わり』
国家試験前は、自分を追い込んで勉強するために、こんな思考を持っていました。
ストレスを上手に使って、自分にプレッシャーを与えて勉強できるのであればいいのですが…
当時の私に『国家試験に落ちても、人生は終わらないよ』って伝えてあげたい(笑)
強迫観念で勉強しても、睡眠や生活支障がでれば体調不良で国家試験を受験できないかもしれない、頑張りを発揮できなくては意味がないですよね。
だから、極端な思考をしていると気づいたら
『そんなことないよ。』って自分に優しい言葉をかけてあげる
『今は追い込まれるくらいに一生懸命(国家試験勉強)に取り込んでいるんだなって自分を認めてあげる
ようにしてあげてください。
べき思考
まだ3例目の分娩介助の記録ができていないのに…4、5例目と分娩介助していくなんてできないよ!納得できない!!
実習中、記録が溜まってきて回らなくなった時、この『べき思考』から怒っていました。
実習記録に時間がかかる自分にも、記録ができていないのにドンドン進む実習自体にも(笑)
当時を振り返ると、ちょっとしたことでイライラするようになっていましたね。励ましてくれている家族にも八つ当たりしたことがありました(笑)
家族にも八つ当たりしても、イライラしても意味がなかったのですが…当時から『べき思考』が強かったな~と今になって思うことがあります。
『べき思考』になりやすいと気づいてからは、自己否定をしなくなり、どうにもならないことにクヨクヨ悩まなくなりました。
この記録が溜まって、理不尽で怒っている当時の私に助言するならば
記録が溜まっている状態で次の分娩介助する状況になった場合、何に不安やストレスを感じるの?
って自分と対話します。当時の自分が
記録は助産ケアやアセスメントの思考の整理になるので、終わっていない状態で次に進むのが不安。
っている不安が浮き彫りになりました。
分娩介助ができるチャンスがきたら、自分の記録が終わっていないという理由で向き合えないのは患者さんや指導者さんに失礼ではないか?
分娩介助の後、指導者さんに振り返りをしてもらって、そこで一度振り返りをしている。次の課題も明確にしてから、次の分娩介助に挑めばいいじゃないか。
と『すべき』とか『絶対こう』っていう信念を手放すともう少し助産実習を楽しめる余裕があったのかな~なんて今だから思えることです。
だから、実習指導者の立場になった今は、こんな視点で考えられると少し楽になるよって助産学生さんや助産師の後輩に伝えたいです。
行動的な対処法
ストレスの原因によって引き起こされた身体的・感情的反応を直接的に緩和する対処法です。
休息やヨガなどの身体ほぐしなどが具体的な対処法となります。
私は3~5時間は必ず睡眠時間を確保していました。
学生室で集中出来ない時は、病院の近くのコンビニまでボーっと散歩することが私のお気に入りの気分転換でした。
社会的関係の中での対処法
他者・資源(サポートとなる対象)から援助を受けることです。
サポートしてくれる人は5人くらいいると理想といわれています。
家族、実習仲間、教員、友達、恋人など…
教員や先輩にアドバイスをもらうのもいいですが、家族や友人に話を聞いてもらう、気持ちに寄り添ってもらうだけで気持ちが楽になったっという経験を幾度なくしてきました。
もし、誰にも『助産実習』の悩みを相談できない、辛い…
という思いがあれば、私でよければTwitterのDMでも、ブログからでもメッセージください。
かつて辛い助産実習を体験した先輩として、気持ちに寄り添いお話を聞くことはできると思っています。また、実習指導者の視点でアドバイスができることがあるかもしれません。(求められていない限りアドバイスはしないので安心してね)
助産学生さんだけじゃなくて、入職して悩んでいる新人さんにもストレスのコーピング方法を知ってほしいです。
さいごに
助産学生さんはとても忙しいですよね。講義、演習、グループワーク、実習、就活、国試—
大変な助産学生を少しでも応援できる内容になっていれば、嬉しいです♡